空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

ゲーム・アニメ規制のものがなされた「請願」についてなるべくわかりやすく書いてみる

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ねとらぼ:「エロゲーは危険な社会を作り出す凶器」――規制を求める請願、衆議院に - ITmedia News

さて、ここで「請願ってなんぞや?」と思った人はいるのではないかと。いや、正確には「衆議院」という単語も出てきた上、政治家の名前も出たことから、国が関わるかなり重大なことに見え、ことによると今、国会で審議されている児童ポルノ法問題と同一化してしまった人もいるのではないかと。しかし、それらは異なるものです。では、請願とは何なのかというのをちょっとまとめてみましょう。知っている人からしたらつまらない内容だとは思いますが、ご了承ください。あと荒い上に細かいところで間違いがあるかもしれませんので、興味を持ったら自分でしらべていただいたほうがいいかも。


請願って何?

文字通り、頼むことですが、ここでは日本国憲法第16条に定められた「請願権」によって行うものを指します。

請願 - Wikipedia
請願権 - Wikipedia

請願(せいがん)とは冀う(切に希望する)ことである。また、法律用語においては国や地方公共団体に意見や要望、苦情の要請を行う事で、特に日本国憲法第16条に記された公務員の罷免や法律の制定あるいは、改廃または損害を請求する事を示す。

請願は国会の他、地方自治体に対しても行えますが、国会の請願は、議員の紹介によってなされなければなりません(国会法第79条-第82条)。つまりあの請願の議員名も、それが必要なためにあったものとなります。

請願が内閣に送付されるまで

まず、「請願が行われた場合、官公庁には誠実に処理する義務が課せられるが、内容を審理・判定する義務までを負うものではない」とされているので、官公庁としてはそのまま処理を行うという感じみたいですね。国会法第80条2項において「委員会において、議院の会議に付するを要しないと決定した請願は、これを会議に付さない。但し、議員二十人以上の要求があるものは、これを会議に付さなければならない。」とあります。つまり20人未満の場合は、まず委員会で「この請願は送付すべきか」という審査が行われますが、それが却下されるとそこで終わり。しかし議決が通った場合、議院に送られます。そして議院で採決が行われ、採択された場合、内閣に送付されます。そして内閣はそれをどう処理するか判断します。しかしどう処理した場合も国会に報告する必要があります。大ざっぱに図にすると、こんな感じでしょうか。

請願提出→(対応)→各委員会で審議→(通過)→議院で採決→(通過)→内閣で対応
      ↓(却下)             ↓(否決)
     終了                終了

どんな請願が出ているの?

これは衆議院のホームページにて、実際に今までなされた請願(日付、内容、署名数、紹介議員)を見ることが可能です。

請願メニュー

これを見てみると様々な請願が出ています。過去のものも含めて見てみると、一瞬、冗談か? とも思えるようなものもあります。オンラインの署名活動サイト、『署名TV』を見てみると、冗談としか思えないようなものもありますが、実は本物の請願にも、そこまでではなくてもそういったものはあるのです(ただし多くは却下されていますが)。それに、全く正反対の請願が、同一の委員会に出されている場合もあります。今回も規制法案と逆に「児童買春・児童ポルノ禁止法改正に当たり、拙速を避け、極めて慎重な取り扱いを求めることに関する請願」というのが出ていますね。しかし、請願自体は要件が整えば憲法で保障されています。

過去に出た、同じような請願はどうなっているの?

当然、内閣まで通って法制定されたものもあれば、却下されたものも多数あります。ちなみに同じような請願が何度もなされることもよくあります。
実は、アニメ、ゲームの規制請願は過去にも数回同じようなものが出ています。しかしそれの背景では興味深い展開を見せているのが判明しました。ここでは長くなるので、あとでTimestepsで書く予定です。

追記:書きました。
更に追記:2014/12/25・全面的に書き直したので以下に。

アニメやゲームへの法規制請願はあれからどうなったのか : Timesteps


まとめ

このように、請願はまだ最初の段階なのです。ただ、請願レベルといえども、それがヘンだと思った場合に反対の声をあげるのは悪いことではなく、むしろよいことだと思います。そうしないと、そのままなしくずし的に法案制定されてしまうという可能性はあるのですから。私自身も、この請願については「何故AVなど他のアダルト産業もあるのに、同じように未成年閲覧を禁止しているゲームとアニメだけ標的にするのか」という疑問から、これはアニメやゲームを「子供のもの」と勝手に定義してしまっているという、文化的差別を行っているのではないかというところまで考えてしまいますので、この経緯は注目したいと思っています。


ちなみに、上で書いたように請願は要件が整えば出来ますから、規制に反対する請願を出すことも出来ます。今話題になっている児童ポルノ法がらみでも、請願の署名を集めていますし。

創作物の規制/単純所持規制に反対する請願署名市民有志
■参考:児ポ法/ 同人用語の基礎知識/ 児童ポルノ法案とは?

他にも、それの逆の請願をすることも可能なわけです。例えば「ゲーム、アニメを根拠もなしに社会問題の原因とするような文化的差別を規制するための請願」とかね。もっとも同意する人や提出議員が必要となりますが。
しかし、ネットでの世論がこのような請願(を提出するための署名)に繋がった場合、将来ネットが大きな圧力団体になるのかなあとか思ってしまいます。それが良いか悪いかはわかりませんけど。